コロナウイルス等による大きな社会情勢の変化に伴い、事業を継続することが困難になることもあると思います。実際に多くの飲食店のシャッターが降り、いつの間にか閉店していたということも少なくないと思います。今回は、飲食店の閉店などにともなう店舗の明け渡しの際の「解体」について説明していきます。
解体とは?

そもそも、解体というと建築物をバラバラに壊すことを想像する人も多いと思います。しかし、飲食店の場合、一般的に内装などを借りたときの状態に戻すことを指します。
飲食店の開店の際にはすでに何らかの構造体があった場所の内装を変えて、使用している場合がほとんどだと思います。かなり老朽化が進んでいた場合を除き、閉店することを理由に店舗をバラバラに壊してしまうことはしないと思います。
解体の種類
内装解体

カウンターや照明など店内の内装を撤去することを指します。カウンターや壁材を解体することも含みます。基本的に、天井や床はオーナーや管理者などと相談し決定しますが、そのままにしておくことが多いです。
スケルトン解体

スケルトン解体は、その名の通り構造体だけを残しそれ以外は撤去することを指します。基本的には手作業で天井や床などをすべて壊し、コンクリート打ちっぱなしの状態にします。
原状回復(原状復帰)

明け渡しの際に、賃貸契約書に記載された状態に戻すことを指します。基本的には、入居前の状態に戻すことになりますが、管理者やオーナーとの交渉によって変更も可能になります。
内装工事の種類
内装工事には3つの種類があり、それぞれ発注者、費用負担先に違いがあります。
| 発注者 | 費用負担 | その他 | |
| A工事 | オーナー | オーナー | 共用部の工事など |
| B工事 | オーナー
(テナントの要望) |
テナント | テナントの事業のための工事
建物全体に影響する |
| C工事 | テナント | テナント | オーナーの許可が必要
原状回復も含む |
実際の工事の手順

今度は、実際に明け渡すまでのスケジュールを確認していきます。オーナーとのすり合わせや施工会社への見積もり依頼など実際に工事に取り掛かるまでにも様々な工程があります。一つ一つ確認していきましょう。
1.賃貸契約書の内容の確認
明け渡しの際の状態、返却期日は、契約書に記載のある場合がほとんどであるため、まずは契約書を確認します。
基本的には、契約書の内容が優先されるが、次の入居者とのかねあいなどで変更されることもあるため、管理者・オーナーと相談の上、最終的な決定をすることが必要になります。また、期日を守らない場合、違約金発生の可能性もあるだけでなく、次の入居者に迷惑がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組むことも必要です。
2.管理者・オーナーと打ち合わせ
契約書の内容をもとに、明け渡しの状態や期日を決めていきます。工事を開始するには、許可が必要になるため、十分に打ち合わせる必要があります。
3.施工会社の選定
管理者やオーナー立ち会いのもと、施工会社との打ち合わせを行うことが望ましいです。現地での見積もりの際など、残しておいていいものもとに元に戻すものを確認しながら勧めていきます。電気水道などのライフラインの使用の有無も合わせて確認し、解約の準備をしておくことも必要です。
4.近隣への報告
実際に工事が始まると、騒音などで近隣に迷惑がかかる場合がありますので、予め周囲の方に知らせておく必要があります。不要なトラブルを避けるためにも、やっておいたほうが無難です。
5.不用品・残留物の片付け
工事が始まるまでに、食器や厨房機器など再利用できるものは自分たちで撤去しておくと、工事をスムーズに進みます。施工会社に処分して貰う場合には別途費用が発生することもあるため、注意が必要です。
6.工事
実際に工事に取り掛かってもらいます。工期は遅れることを想定して余裕を持って計画を立てておくことをおすすめします。
7.清掃
最後にきちんと打ち合わせ通りの状態になっているか確認する意味を込めて、清掃を行うことが望ましいです。これが最後の仕事になりますので、丁寧に清掃しましょう。
解体時の注意点
・原状回復などのC工事にはオーナーの許可が必要になります。
・工事前の近隣への周知は基本的に施工会社がやってくれるが、事前に行政への届け出が必要な場合もあるため、確認する必要があります。
・返却期日を過ぎてしまうと、違約金など別途費用が発生するため、必ず余裕を持ったスケジュールを立ててください。
解体費用

ここでは、実際に発生する費用に関して説明します。
解体費用は大きく4つに分けられます。
建物取壊費用
人件費や養生代など作業にかかる費用です。
産業廃棄物処理費用
産業廃棄物は建設リサイクル法によって分別・再資源化(処分)することが決められており、処分するのに相応の費用が必要になります。
諸費用
各種書類作成、工事申請費用、近隣への挨拶費用などです。
施工会社の利益
費用相場

一般的に建物の解体には平均的な坪単価があり、飲食店の解体も例外ではありません。基本的には、延床面積が広くなれば費用も高くなりますが、周囲の状況などにより必ずしもそうなるわけではありません。
坪単価は、躯体の構造によってある程度金額が決まり、木造など比較的柔らかい構造の建物は安く、鉄筋コンクリートのような堅牢な構造の建物は高くなります。
解体費用の相場は、坪単価で概ね決まり、以下のような目安があります。
| 1坪 | 30坪 | 50坪 | |
| 木造 | 3-5万円 | 90万ー150万 | 150万ー250万 |
| 軽量鉄骨造 | 4-7万円 | 120万ー210万 | 200万ー350万 |
| 鉄筋コンクリート造 | 5-8万円 | 150万ー240万 | 250万ー400万 |
実際の工事費用はケースバイケースで変わってくるため、あくまでも目安です。
解体費用は高騰傾向

近年、産業廃棄物の処理費用の高騰が影響し、解体の坪単価は上昇傾向です。廃棄物処理費用は2010年基準で16%価格上昇しています。
(日本銀行「企業向けサービス価格指数の公表データ一覧」より)
2017年から実施された中国への資源ごみ輸入禁止が、廃棄物処理費用の高騰に追い打ちを掛けています。
更に、大気汚染防止法の一部を改正する法律が、2020年5月29日に可決され、2022年より施行されるが、ここでは、「アスベストについて、都道府県等への事前調査結果報告の義務付けや罰則規定が設けられる」ことにあるため、 追加の費用が発生する可能性が高い。
費用がかさむ要因
様々な要因で、工事費用が高くなる可能性があります。いかにあげるものは主な要因となります。
・アスベスト除去工事を含む場合
・早朝深夜に作業しなければならない場合
・現場近くに車両駐車スペースがない場合
・作業にかなりの手間がかかる場合(構造が複雑、老朽化が進んでいるなど)
まとめ

今回は、飲食店の解体がどのように行われるのかを説明してきました。何度も説明しましたが、あくまでも他者から借りている物件であるため、管理者やオーナーとの話し合いをきちんと行うこと、期日までに明け渡すことが最も重要です。
先にも触れましたが、これから解体費用の相場は上昇する傾向にあります。きちんとした見積もりを受けた上で、納得した金額での施工を進めていくことが大切です。